電子帳簿保存法 改正②

税務

1義務化となった電子取引の保存方法

 電子帳簿保存法は、次の3つに区分されます。
  ①電子帳簿等保存<電帳法4条①②>
  ②スキャナ保存 < 〃 4条③>
  ③電子取引保存 < 〃 7条(旧10条)>
 このうち③電子取引保存について、紙保存が廃止され電子保存が義務化されました。
 (①②については、紙によるか電子によるかは任意です。)

2021年12月10日に決定した令和4年度税制改正大綱に改正電子帳簿等保存法の猶予が盛り込まれました
これにより電子保存の義務化は、2022年1月1日から2023年12月31日まで2年の猶予期間が設けられることになりました。
2024年1月1日までは、紙による印刷保存でも対応できます。

2電子取引に該当するもの

  ①電子メールによりPDFファイルの請求書等を受領
  ②HPからダウンロードした請求書等のデータ又はHP画面コピー
  ③電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
  ④クレジットカード・キャッシュレス決済明細データ等の利用
  ⑤EDIシステムを利用
  ⑥ペーパーレス化されたFAXの利用
  ⑦請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

   <国税庁:電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問4>

3電子取引の保存要件

(1)真実性の要件
  次の①~④のいずれかの措置を行うこと
   ①タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
   ②取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報
    を確認できるようにしておく
   ③記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム、または
    記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
   ④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

(2)可視性の要件
  保存場所に、パソコン等の操作マニュアルを備え付け、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力
  できるようにしておくこと
  検索機能を確保すること(基準期間の売上高が1000万円以下の小規模事業者でダウンロードの求め
  に応じることが出来る場合は不要)

4具体的対応

 真実性の要件①~④の措置について、①は取引相手がタイムスタンプを押すことが前提であり相手次第です。
 ②は自社がタイムスタンプを押すことが前提になりますので、タイムスタンプを導入する費用がかかります。
 ③は記録事項の訂正・削除を行った場合に内容を確認できる又は訂正・削除を行うことができないシステムを
 導入する費用がかかります。
 したがって、とりあえずは④の「正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定」を定めて、運用
 することが妥当でしょう。
 この「正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定」は国税庁HPに規定のひな型がありますの
 で、ダウンロードして自社用にアレンジして使います。
 
 国税庁HP「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規定」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
 

 また、検索要件の具体的対応については、データのファイル名に、「年月日」「取引先」「金額」を表示する
 形式によって保存すれば要件を満たしていることになります。
 例えば、2022年10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書のファイル名を、「20221031㈱国税商事110000」にすれば、年月日、取引先、金額が網羅されていることになります。
 その上で「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存します。

 電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規定を作ること、データ保存のファイル名に規則性
 をもたせて内容を表示すること
 の2点を整備することで今回の電子取引の電子保存義務化は要件をクリアできます。