令和4年度税制改正大綱

税務

令和4年度税制改正大綱では「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに、新しい資本主義の実現に取り組むこととしています。
そのためには、企業が研究開発や人的資本などへの投資を強化し、その収益を株主だけでなく従業員や下請企業を含む多様なステークホルダーへと循環させていくことが必要等の観点から以下の税制改正大綱が閣議決定されました。

1.成長と分配の好循環の実現
(1)積極的な賃上げ等を促すための措置
   継続雇用者の給与等支給額及び教育訓練費を増加させた企業に対し、給与等支給額の増加額の最大30%
  を控除する措置を設ける。
  その際、大企業に対してはマルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを要件とする。
  中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、増加額の最大
  40%を控除する措置を設ける。

(2)オープンイノベーション促進税制の拡充
   スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションをさらに促進する観点から、資金の払込
  みによる出資の一定額の所得控除を認めるオープンイノベーション税制について、対象を拡充した上で2年
  間延長する。

(3)住宅ローン控除等の見直し
   住宅ローン控除の適用期限を4年延長して令和7年末までの入居者を対象とするほか、控除率を1%から
  0.7%へ引き下げるとともに、適用対象者の所得要件も2000万円に引き下げる。

(4)固定資産税等
   土地に関わる固定資産税等の負担調整措置について、令和4年に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅
  を、評価額の2.5%(現行5%)とする。

2.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)個人所得課税のあり方
  ➀諸控除の見直し
   配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組を進めて
   きている。この改正の影響等も踏まえ、各種控除のあり方等を検討する。
  ②私的年金等に関する公平な税制のあり方
   老後に係る税制について、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら具体的な案の検討を進めていく。
   なお、高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する
   状況がみられるため、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討
   する必要がある。
  ③記帳水準の向上
   所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行う。

(2)相続税・贈与税のあり方
   相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の
  あり方を見直すなど、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

(3)外形標準課税のあり方
   外形標準課税の適用対象法人の法人事業税所得割について、年800万円以下の所得に係る軽減税率を
  見直す。

3.国際課税制度の見直し

4.円滑・適正な納税のための環境整備
(1)インボイス制度への円滑な移行
   消費税について適正な課税を確保する観点から、令和5年10月に施行される消費税のインボイス制度に
  ついて円滑な制度移行に向けて万全の対応を進める。
(2)税理士制度の見直し
   多様な人材の確保や、納税者利便の向上を図る観点から、税理士制度の見直しを行う。
(3)税務手続きのデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上

「金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」と提言されているので、いずれ株式譲渡所得の源泉分離課税の税率が変わってくるのかもしれません。