星野リゾートの事件簿 中沢康彦 著
昔は見慣れない名前のホテルだな、と思っていたのにいつの間にか星野リゾートだらけになりました。
破綻したホテルを受託して再生させるプロ集団です。
コンセプトづくり(=理念づくり)の大切さと、現場の創意工夫、もともと破綻会社の社員さん達が固まった頭を柔らかくしていきアイデアを出すまでに成長させる組織文化の凄さを感じます。
リゾートの再生に当って、星野は調査会社を使って詳細なデータを集めることから始める。そのデータに従って「コンセプトづくり」を進める。これは再生する施設のメーンターゲットとなる客層を決め、どうアプローチするかを考える作業である。
コンセプトを明確に定めたうえで、それに合わせた詳細なサービスメニューを組み立て、顧客満足度を高める。サービスの評価を高めることでリピーターを増やし、稼働率を上げる。同時に、業務の進め方を見直し、ムダを取り除く。こうして収益性を高め、早期の黒字化を実現する。―――これが星野の基本スタンスである。
事件が起きたときには、何よりも解決に向かって動き出すことが大切である。ただし、私にとってそれは「その場が収まればそれで良い」という意味ではない。
事件が発生するのは、何らかの原因があるからである。そこには、スタッフが気づいていなかった「何か」がある。
その「何か」をつかむために、星野リゾートでは事件をその場限りにしない。事件を通して、しっかり考え抜くことで、新しい発想が生まれ、スタッフが成長する。つまり、事件こそが新しいサクセスストーリーを生むのである。
ただし、すべてのスタッフが個別に事件に遭遇していたら、会社は混乱し、大変なことになってしまう。だから、ある職場で起きた事件は、ほかの職場にいるスタッフとも共有することが大事である。
私は社内向けのブログや研修などを通じて、これまでに起きた事件のあらましと対応を紹介している。過去に社内で起きた事件を知っていれば、似た出来事が周囲で起きたとき、事件化を防ぐ対応を取ることができる。万が一、事件に発展してしまったとしても、正しい判断をするポイントを過去の事例から知り、最善の策を打つことができる。
事件への対応は、手間がかかるが、それによって得られるリターンは大きい。だから、私は事件をうやむやにしない。私はある意味で、楽しみながら事件に対応している。事件が起きて、のたうち回っている社員の姿を見ると、私は楽しくなってくる。
現場の一人一人の考えが勢いをつくっていく姿、破綻したホテルが再生するまでの勢いが創られていく様子がわかります。
現場に合ったアイデアは現場の社員が出す、理念に基づいて一人一人が考え続け意見交換することで、エネルギーが伝染して勢いがついてくるのかな、と。
エネルギーって伝染るんです。
関係ないけど。